ここでいうトロリーとは保守用機械車(保守用車)を指します。

東京メトロの駅のホームにタブレット(通票)が掲出されているシーンを見かけたことはないでしょうか。

本項ではその通票に焦点を当て、トロリー運行にあたって使用している(と思われる)通票の種別および区間を推測・調査したものです。


各駅の通票保管場所などを調査していましたが、後述の理由によりこれ以上調査が進む可能性は低いと判断したため、未完成ですが調査終了として公開します。


技術区の代表的な保守用車。軌道モーターカー(左)と、保守作業基地のダンプトロ(右)。
右の作業基地は営業線に近接しており、資機材の搬出や保守用車は横取り装置により本線に出し入れされる。


 

 

トロリー用通票を初めて見たのは平成初期、四ツ谷駅に到着した丸ノ内線の車内からでした。

特に解説があったわけではありませんが、駅の壁に掛けられた4つの輪、そしてその上部に記載された区間と線路方向から、確実に通票であると感じました。

とはいえ、当時は目的が分からず、保安装置が故障した際の代用閉塞として使用するのかなとも思いましたが、分岐器のない四ツ谷駅を境界駅にしたり、あまり実用的でない構成にも見え、何故備えられているのかと疑問に思っていました。

それから15年近く経った頃、たまたま丸ノ内線に乗っていた四ツ谷駅。

壁の通票保管場所が綺麗になっていた事に気付きました。

いつの間にか3種類になっていた!…という点は置いておいて、一番気になったのは表示されていたその区間。

おいおい、四ツ谷〜荻窪と四ツ谷〜中野富士見町って、四ツ谷〜中野坂上間が重複してるじゃないか!と内容に矛盾を感じたのです。

 

 

 

 

時を同じくして中野富士見町でこの標示を見つけました。

これを見て、やっぱりこれは通票だったのかという気持ちの一方で、

・これにも区間重複している箇所がある(富士見町〜坂上)

・四ツ谷にあるものとも区間が重複しているものがある(四ツ谷〜富士見町)

・↑しかし種別らしき塗り分けの色が四ツ谷のものと違っている

・つまり場所ごとに同じ区間の通票を別々に定めている?

加えて通路線(*)にまで通票が整備されている事など疑問がどんどん出てきましたが、通票だったという確証を得たことの方が大きく、この物体の目的に一層の興味が出てきました。

(*)通路線:車両基地への入出庫線

そしてひとつの答えが…。

これは代々木上原に置かれていた通票ですが、上部に「トロリー用通票定位置」との記載がある事に気づきました。ここでこの物体が保守用車に関する物であるという事にたどり着いたのです。

今まで見かけた保管場所はいずれも保守基地がある(あった)場所だった為、そこから考えると分岐器などのない四ツ谷駅に置かれていた点も納得でき、保守用車の夜間走行用なのではないか?という事が判ってきました。




 

 

ただしそれ以上は何も分かりませんでした。

さしあたって各路線の保管場所を探しましたが、それも全路線全てを確認することはできず、それどころか、この物体がどのように運用されるのかも結局不明です。

おそらく線閉の物証として保守用車がこの通票を携帯して運行する、といった具合なのではないかと推測できますが、各保管場所に記載されている区間で路線が完結する場合はともかく、四ツ谷や中野富士見町のように表示区間が重複している場合の実際の取り扱いなど、疑問は疑問のままとなっています。

また、左の画像は代々木上原にあった通票保管場所のその後の様子ですが、通票も表示もなく、既に運用されているような様子ではありません。
このような状況は2010年前後より各路線で見られるようになり、もしかすると取り扱いの変更などがあり、現在は通票自体が廃止されている可能性も考えられるようになりました。


その為、これ以上の調査は不可能と感じ、現在まで判明した情報のみをまとめることで調査を一旦終えることとしました。



◆線区ごと通票種別

調査によってある程度間違いないと言える事は、A線が〇(1種)、B線が□(2種)となっている点です。
また、色分けは黄色、青色、赤色のいずれかによっており、それ以外の色は無いと思われます。

通票の色分けが調査不明な部分は色をグレーに、区間が不明な部分は「?」をつけています。

銀座線
  区間 線路 通票種別
  渋谷〜新橋? A
B

  区間 線路 通票種別
  上野〜浅草 A
B
上野〜新橋? A
B
通路線   不明
丸ノ内線
  区間 線路 通票種別
  茗荷谷〜池袋? A
B

  区間 線路 通票種別
  四ツ谷〜茗荷谷 A
B
四ツ谷〜荻窪 A
B
四ツ谷〜中野富士見町 A
B

  区間 線路 通票種別
  四ツ谷〜中野富士見町 A
B
中野富士見町〜荻窪 A
B
中野富士見町〜方南町 A
B
通路線   +?
日比谷線
  区間 線路 通票種別
  中目黒〜? A
B

  区間 線路 通票種別
  南千住〜北千住? A
B
南千住〜? A
B
通路線   不明
東西線
  区間 線路 通票種別
  中野〜高田馬場 A
B
高田馬場〜東陽町 A
B

  区間 線路 通票種別
  高田馬場〜東陽町 A
B
東陽町〜妙典 A
B
通路線 A
B

  区間 線路 通票種別
  妙典〜東陽町 A
B
妙典〜西船橋 A
B
通路線?
不明

不明

 

千代田線
  区間 線路 通票種別
  代々木上原〜? A
B

  区間 線路 通票種別
  綾瀬〜北千住 A
B
綾瀬〜北綾瀬 A
B
有楽町線
副都心線
  区間 線路 通票種別

和光市〜? A
B
通路線 A 不明
B 不明

  区間 線路 通票種別
  新木場〜? A
B
通路線(側線) A
B

  区間 線路 通票種別
  西早稲田〜? A
B
半蔵門線 不明
南北線 不明

 

◆画像(保管場所)
駅ホームや車内から確認できた保管場所の画像を掲載します。
「タブレット」や「A・B」など表記のあるものは間違いないと考えられますが、中には真偽不明の単なるフックもある為、すべてが確実なものとはいえません。

 

銀座線
渋谷B線
「タブレットB」「タブレットA」の表示がある。
上野A線
「A」「B」「通路線」に分かれている。

「A線浅草方面(黄)」「A線新橋方面(青)」
「B線浅草方面(黄)」「B線新橋方面(青)」
の表示がある。
丸ノ内線
茗荷谷A線
区間の記載はなく「タブレット掲出位置」の表示。
四ツ谷A線
「四ツ谷〜茗荷谷」
「四ツ谷〜荻窪」
「四ツ谷〜中野富士見町」
の3区間ごとに色分けされている。
なお、昔と違い通票は掲出されなくなっていた。
中野富士見町A線
「四ツ谷〜中野富士見町」
「中野富士見町〜荻窪」
「中野富士見町〜方南町」
「通路線」
の区間ごとに形状つきで色分けされている。
通路線はイラスト通りであれば形状は第6種になると思われる。
日比谷線
南千住B線
ただのフックのみの為真偽不明。
中目黒構内A線
表示はないが日中も通票が保管されていた。
東西線
東陽町A線
「高田馬場〜東陽町」
「東陽町〜妙典」
「通路線」
の区間ごとに形状つきで色分けされている。
深川基地への通路線は複線の為、通票も2つとなっているようである。
妙典A線
「西船橋」「東陽町」の表示がある。
左の「CD」は通路線を指しているのか、通票と無関係なのかは不明。
  このほか高田馬場A線に保管場所がある事を確認している。
千代田線
代々木上原構内B線
「トロリー用通票定位置」の表示があり、日中も通票が保管されていた。
綾瀬B線
「綾瀬〜北千住」「綾瀬〜北綾瀬」の表示がある。
有楽町線
副都心線

和光市A線
ただのフックのみの為真偽不明。
新木場B線
「A線」「B線」「通路線A線」「通路線B線」の表示がある。
西早稲田B線
「保守用車通票(タブレット)掲出位置」の表示がある。
半蔵門線

押上B(D)線
ただのフックのみの為真偽不明。